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投稿日:2026.07.22

賞与引当金繰入とは?仕訳・税務処理と注意点をわかりやすく解説

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賞与は従業員の働きに対して支給する重要な報酬ですが、支給時期と勤務期間が異なる場合は、適切な期間に費用を計上する必要があります。そのために用いられる会計処理が「賞与引当金繰入」です。

賞与引当金繰入は、翌期に支給する賞与の見積額のうち、当期の勤務に対応する部分を費用として計上する処理です。ただし、会計上は費用になっても、税務上は原則として経費にすることができません。また、支給額がすでに確定している賞与は、賞与引当金ではなく未払費用や未払金として処理する場合があります。

この記事では、賞与引当金繰入の意味、計算方法、仕訳、税務上の取り扱い、決算賞与との違い、クラウド会計を利用する際の注意点を解説します。

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賞与引当金繰入とは?

賞与引当金繰入を理解するには、費用として計上する「賞与引当金繰入額」と、その相手勘定として負債に計上する「賞与引当金」を分けて考える必要があります。

賞与引当金は、賞与の支給資金を別口座などに蓄えておくものではありません。翌期の賞与のうち当期に対応する金額を、当期の損益と貸借対照表に反映させるための会計上の処理です。

賞与引当金とは?

賞与引当金とは、翌期に従業員へ支給する賞与の見積額のうち、当期の勤務に対応する金額を負債として計上する勘定科目です。

たとえば、3月決算の会社が6月に賞与を支給し、その賞与の算定対象に1月から3月までの勤務が含まれている場合、その期間に対応する金額は3月期の費用として計上するのが適切です。実際の支給は翌期であっても、勤務が行われた期間に対応させて費用を計上することで、各事業年度の損益を適切に表示できます。

引当金は、将来支出が見込まれるというだけで自由に計上できるものではありません。

中小企業の会計に関する指針」では、次の要件をすべて満たす場合に計上するとされています。

  1. 将来の特定の費用または損失であること
  2. その発生が当期以前の事象に起因していること
  3. 発生する可能性が高いこと
  4. 金額を合理的に見積もることができること

賞与引当金については、賞与規程、支給実績、業績、在籍者数などをもとに、翌期の支給見込額と当期に対応する金額を算定します。

賞与引当金繰入とは?

賞与引当金繰入とは、賞与引当金を設定または増額するために、当期の費用を計上する処理です。

決算時に賞与引当金を50万円計上する場合は、損益計算書に「賞与引当金繰入額」50万円を費用として計上し、貸借対照表に「賞与引当金」50万円を負債として計上します。

「繰入」は費用を計上する処理を指し、「引当金」はその処理によって貸借対照表に残る負債を指します。

賞与引当金繰入と賞与引当金の違い

項目 賞与引当金繰入 賞与引当金
意味 当期に対応する賞与見込額を費用として計上する処理 繰入処理によって貸借対照表に計上される負債
表示先 損益計算書の費用 貸借対照表の負債
勘定科目の例 賞与引当金繰入額 賞与引当金
残高 原則として当期の費用に反映される 支給や戻入などで取り崩すまで残る

賞与引当金と未払賞与の違い

賞与引当金と未払賞与は、決算日時点で支給額が確定しているかどうかが主な違いです。

項目 賞与引当金 未払賞与
決算日時点の支給額 未確定であり、合理的に見積もる 原則として確定している
会計処理 当期対応額を賞与引当金として計上 内容に応じて未払費用または未払金として計上
税務上の扱い 繰入額は原則として損金不算入 一定の要件を満たせば支給前でも損金算入できる
主な例 翌期の夏季賞与のうち当期勤務に対応する部分 従業員ごとの支給額を決算日までに確定・通知した決算賞与

日本公認会計士協会の「未払従業員賞与の財務諸表における表示科目について」では、支給額が確定し、支給対象期間に対応して算定されている賞与は未払費用、支給対象期間以外の臨時的な要因に基づいて算定された賞与は未払金とされています。

採用する会計基準や賞与の決定方法によって判断が異なるため、支給額の確定状況だけで勘定科目を決めないことが大切です。

賞与引当金繰入の仕組みと計上ルール

賞与引当金繰入では、翌期の支給見込額を算定したうえで、そのうち当期の勤務に対応する部分だけを費用計上します。実際の支給額との差額が生じた場合は、支給時または見積額の見直し時に調整します。

計上のタイミングと考え方

賞与引当金は、月次決算や年度決算の際に、会社の会計方針と賞与の支給対象期間に基づいて計上します。「原則として毎月計上する」と決まっているわけではなく、決算時にまとめて計上する会社もあれば、月次損益を把握するために毎月見積計上する会社もあります。

たとえば、3月決算の会社が6月に賞与を支給し、支給対象期間が1月から6月までである場合、1月から3月までの3か月分は当期の勤務に対応します。4月から6月までの3か月分は翌期に対応するため、3月末に計上する賞与引当金は支給見込額の50%が目安となります。

ただし、単純な月数按分が常に適切とは限りません。賞与の査定期間、業績連動部分、入退社の状況、賞与規程などを踏まえ、合理的な方法で見積もる必要があります。

賞与引当金繰入額の算出方法

支給対象期間が明確であり、勤務期間に応じて賞与が発生すると考えられる場合は、次の式で算定できます。

賞与引当金繰入額 = 翌期の支給予定賞与額 × 当期に対応する勤務期間 ÷ 賞与の支給対象期間

次の条件で計算します。

  • 翌期の賞与支給見込額:100万円
  • 賞与の支給対象期間:1月から6月までの6か月
  • 当期に対応する期間:1月から3月までの3か月

計算は次のとおりです。

100万円 × 3か月 ÷ 6か月 = 50万円

この場合、3月末に計上する賞与引当金繰入額は50万円です。

支給対象者ごとに算定額や対象期間が異なる場合は、従業員別または部門別に見積もった金額を合計します。業績連動賞与などで支給額が変動する場合は、決算日時点で利用できる情報をもとに見積額を算定し、必要に応じて見直します。

決算時・支給時の仕訳例

前述の例を仕訳にすると、次のとおりです。以下の仕訳では、説明を簡単にするため、源泉所得税や社会保険料などの控除を省略しています。

決算時の仕訳

3月末に賞与引当金50万円を計上します。

借方 金額 貸方 金額
賞与引当金繰入額 500,000円 賞与引当金 500,000円

支給時の仕訳

6月に賞与100万円を支給した場合、前期に計上した50万円は賞与引当金を取り崩し、残りの50万円は支給した事業年度の賞与として費用計上します。

借方 金額 貸方 金額
賞与引当金 500,000円 普通預金 1,000,000円
賞与 500,000円

実際の支給時には、従業員から控除する源泉所得税や社会保険料を「預り金」などで処理します。

実際の支給額が見積額を上回った場合は、不足分を賞与などの費用として計上します。支給額が見積額を下回った場合は、超過している引当額を賞与引当金戻入額などで調整します。使用する勘定科目や表示方法は、会社が継続して採用している会計方針に合わせます。

クラウド会計ソフトでの処理方法

freee会計やマネーフォワード クラウド会計などでは、仕訳テンプレートや繰り返し取引の登録機能を利用することで、毎月同じ仕訳を入力する負担を減らせます。対応する給与計算ソフトと連携すれば、確定した賞与の支給データを会計へ反映できる場合もあります。

ただし、クラウド会計が賞与の支給見込額や当期対応割合を自動的に判断してくれるわけではありません。賞与規程、支給実績、業績、在籍者数などをもとに、会社側で見積額を決定する必要があります。

また、利用できる機能や連携範囲は、会計ソフト・給与計算ソフトの組み合わせや契約プランによって異なります。自動登録を設定した後も、決算時には支給見込額と帳簿残高が一致しているかを確認してください。

計上漏れや過大計上を防ぐ方法

賞与引当金は見積額を計上するため、対象者や対象期間の把握が不十分だと、計上漏れや過大計上が生じます。次の資料をそろえて計算すると、見積額の根拠を残しやすくなります。

  • 賞与規程や賃金規程
  • 過去の賞与支給実績
  • 支給対象期間
  • 決算日時点の在籍者一覧
  • 入社・退職予定者の情報
  • 人事評価や業績連動部分の算定資料
  • 部門別または従業員別の計算表

月次で計上している場合も、決算時には最新の支給見込額で再計算します。前回の見積額をそのまま繰り越すのではなく、支給方針や人員の変化を反映させることが必要です。

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賞与引当金繰入の税務上の取り扱い

会計上の賞与引当金繰入額は、法人税の計算では原則として損金(=経費)に算入できません。一方、従業員ごとの支給額が確定した賞与は、通知時期や支払時期などの要件を満たせば、実際の支給前でも当期の損金に算入できる場合があります。

賞与引当金の繰入額は税務上「損金不算入」

賞与引当金の繰入額は、会計上は費用として計上しますが、税務上は原則として経費にすることができません。そのため、法人税申告書では、会計上計上した賞与引当金繰入額を所得に加算します。

翌期に賞与を支給した際は、前期に加算した賞与引当金相当額について、法人税申告書で減算調整を行うのが一般的です。

たとえば、前期に賞与引当金繰入額50万円を費用計上して申告上加算し、当期に賞与を支給して賞与引当金50万円を取り崩した場合、当期の申告では前期に加算した50万円を減算します。会計上の費用計上時期と税務上の損金算入時期が異なるため、申告調整の履歴を継続して管理することが必要です。

賞与引当金などの負債性引当金は税務上損金不算入となります。貸倒引当金については、対象法人、対象債権、繰入限度額などの要件を満たす範囲で損金算入が認められる場合があります。

決算賞与は要件を満たせば支給前でも損金にできる

従業員に支給する賞与の損金算入時期は、賞与の確定状況や支給時期によって異なります。

労働協約や就業規則で定めた支給予定日が到来し、支給額の通知と損金経理が行われている賞与は、一定の条件のもと、支給予定日または通知日のいずれか遅い日の属する事業年度の損金になります。

これとは別に、決算日までに従業員ごとの支給額を通知する未払賞与は、次の3つの要件をすべて満たす場合、通知した日の属する事業年度の損金に算入できます。

  1. 支給額を各人別に、かつ、同時期に支給を受けるすべての使用人へ通知していること
  2. 通知した金額を、通知したすべての使用人に対し、通知日の属する事業年度終了日の翌日から1か月以内に支払っていること
  3. 通知した支給額を、通知日の属する事業年度に損金経理していること

たとえば、3月決算の会社が3月31日までに対象となる従業員へ各人別の支給額を通知し、その全額を4月30日までに支払い、3月期の費用として計上していれば、3月期の損金に算入できる可能性があります。

一方、通知額と実際の支給額が異なる場合や、通知した従業員の一部に期限内の支払いを行わなかった場合は、要件を満たさなくなるおそれがあります。

また、「支給日に在職している従業員に限り支給する」という条件がある場合、その通知は税務上の確定した通知に該当しないと判断されます。通知の事実、通知日、従業員ごとの金額を確認できるよう、書面や電子データで記録を残してください。

詳しい要件は、国税庁の「No.5350 使用人賞与の損金算入時期」で確認できます。

決算賞与を当期の損金にできるかどうかは、支給額の決定方法、通知内容、在職要件、支払日などによって結論が変わります。決算日直前に判断すると期限内の通知や支払いが難しくなるため、支給を決める前に当法人へご相談ください。

従業員賞与と役員賞与では税務上の扱いが異なる

従業員に支給する賞与を損金に算入するために、税務署へ事前の届出を行う必要はありません。

一方、役員に対する給与は、定期同額給与、事前確定届出給与または一定の業績連動給与などに該当しない限り、原則として損金に算入できません。毎月同額でない役員賞与を事前確定届出給与として支給する場合は、所定の期限までに税務署へ届出が必要です。

従業員賞与と役員賞与では要件が異なるため、使用人兼務役員を含む支給対象者の区分にも注意が必要です。

賞与支給後は賞与支払届を提出する

健康保険・厚生年金保険の被保険者や70歳以上被用者へ賞与を支給した場合、事業主は原則として支給日から5日以内に「被保険者賞与支払届」を提出します。

この手続きは社会保険料と将来の年金額の計算に関するものであり、法人税の損金算入要件とは別です。税務上の処理が完了していても、賞与支払届が不要になるわけではありません。

提出先や対象となる賞与については、日本年金機構の「従業員に賞与を支給したときの手続き」を確認してください。

税務申告や確認時に問題になりやすい事項

賞与引当金や未払賞与では、次のような処理に注意が必要です。

  • 賞与引当金繰入額を法人税申告で加算していない
  • 前期に加算した金額を支給年度に減算していない
  • 決算賞与の通知日や通知内容を確認できる資料がない
  • 通知額と実際の支給額が一致していない
  • 通知した従業員の一部に期限内の支払いをしていない
  • 賞与規程に在職要件があり、債務が確定していない
  • 従業員賞与と役員賞与を同じ条件で処理している

決算賞与の損金算入を予定している場合は、決算日までに通知対象者、通知額、支払予定日、賞与規程を確認し、経理・人事・給与計算の担当者間で認識を合わせておく必要があります。

よくある質問(Q&A)

賞与引当金繰入とはどういう意味ですか?

翌期に支給する賞与の見積額のうち、当期の勤務に対応する金額を当期の費用として計上する処理です。同額を賞与引当金として負債に計上します。

実際の資金を別に蓄える処理ではなく、賞与に関する費用を勤務期間に対応させるための会計処理です。

すべての会社が賞与引当金を計上する必要がありますか?

引当金の計上要件を満たし、金額に重要性がある場合は、採用する会計基準に従って賞与引当金を計上します。

税務上損金に算入できないことだけを理由に、会計上も計上しなくてよいとは限りません。会社が採用している会計基準、賞与規程、支給実績、金額的重要性などを踏まえて判断します。

賞与引当金と実際に支給する賞与の違いは何ですか?

賞与は従業員に実際に支給する報酬です。賞与引当金は、翌期に支給する賞与のうち当期に対応する見積額を、支給前に負債として計上したものです。

決算日時点で支給額が確定している場合は、賞与引当金ではなく、未払費用や未払金として処理することがあります。

賞与引当金は負債ですか?

賞与引当金は貸借対照表の負債に計上します。将来の賞与支給に関する条件付の債務であり、引当金の計上要件を満たす当期負担額を表示するものです。

賞与引当金繰入額は人件費として損金になりますか?

賞与引当金繰入額は会計上の費用です。従業員の所属や業務に応じて、製造原価や販売費及び一般管理費などに計上します。

ただし、税務上は原則として損金に算入できないため、法人税申告で加算調整が必要です。実際に賞与を支給した事業年度には、前期に加算した金額について減算調整を行います。

賞与引当金を計上すれば節税になりますか?

賞与引当金の計上だけでは節税になりません。会計上は費用になりますが、税務上は原則として損金不算入だからです。

従業員向けの決算賞与は、各人別の通知、期限内の全額支払い、当期の損金経理などの要件を満たせば、支給前でも当期の損金に算入できる場合があります。

決算日までに支給額が決まっている場合も賞与引当金を使いますか?

支給額が確定している場合は、通常、将来額を見積もる賞与引当金ではなく、未払費用や未払金として処理します。

ただし、どちらの科目を使用するかは、賞与の支給対象期間、算定方法、決定時期、採用する会計基準によって異なります。決算賞与の税務要件と会計上の勘定科目は別々に確認する必要があります。

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明治通り税理士法人ができるサポート

賞与引当金と決算賞与では、会計上の処理と税務上の損金算入時期が異なります。支給額の決定や通知を行った後では修正できない要件もあるため、決算前に会計処理と支給手続きを確認することが重要です。

当法人では、賞与引当金の算定、決算賞与の損金算入要件、法人税申告の加算・減算調整、クラウド会計の設定などに関するご相談に対応しています。

賞与引当金と決算賞与に関する支援

賞与に関する処理では、次のような事項を確認します。

  • 賞与引当金を計上する必要があるか
  • 翌期の支給見込額をどのように算定するか
  • 当期に対応する勤務期間をどのように判断するか
  • 支給額が確定している場合に使用する勘定科目
  • 決算賞与を当期の損金に算入するための要件
  • 法人税申告で必要となる加算・減算調整
  • 賞与規程や支給条件と会計・税務処理の関係

支給方針が決まっていない段階でも、通常賞与として処理する場合と決算賞与として処理する場合の違いをご説明し、決算日や支払予定日を踏まえて対応をご案内します。

クラウド会計を使った賞与処理の導入・運用支援

当法人では、freee会計やマネーフォワード クラウド会計などの導入・運用を支援しています。賞与に関しては、勘定科目、部門、仕訳テンプレート、給与データとの連携方法などを会社の運用に合わせて設定します。

クラウド会計を導入するだけでは、賞与引当金の見積額や税務上の申告調整まで自動化されるわけではありません。当法人では、入力方法だけでなく、決算時の残高確認や法人税申告まで一貫して対応します。

経理業務全体の支援事例として、Google Workspaceとクラウド会計などを連携し、書類チェック時間を約70%削減した事例もあります。

詳しくは「人手不足でもチェック工数を削減し経理運用を安定化した経理DX事例」をご覧ください。

賞与引当金の計上、決算賞与の要件、クラウド会計の設定に不安がある場合は、決算日や支給日が迫る前に当法人へご相談ください。

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賞与引当金繰入を正しく処理するために

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賞与に関する処理では、会計仕訳、法人税申告、給与計算、社会保険の届出が関係します。処理方法に迷った場合は、支給額や支給日を確定する前に税理士へ確認することをおすすめします。

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