会社の形態とは?4種類の特徴と選び方を比較解説
会社設立を検討している方にとって、「どの会社形態を選ぶべきか」は最初の大きなハードルです。
株式会社、合同会社、合資会社、合名会社、それぞれに特徴があり、設立費用・運営方法・責任の範囲などに大きな違いがあります。
この記事では、4つの会社形態の違いやメリット・デメリットをわかりやすく比較しながら、あなたに最適な会社のかたちを見つけるお手伝いをします。はじめての法人設立でも安心して判断できるよう、税理士目線のポイントも交えて丁寧に解説します。
目次
会社の形態とは?
起業や法人化を考えたとき、最初に直面するのが「会社の形態」というテーマです。
会社の形態とは、企業が法律上どのような組織構造であるかを示す分類のことです。日本では主に「株式会社」「合同会社」「合資会社」「合名会社」の4種類があり、それぞれ設立方法や運営のルール、出資者の責任範囲などが異なります。
会社の形態は、設立費用や信頼性、事業運営の自由度などに直接影響するため、起業前にしっかり理解しておくことが重要です。
会社の形態は4種類!一覧表で比較しよう
起業時に選べる会社の形態は主に4種類あり、それぞれに設立費用や運営体制、責任の範囲などの違いがあります。
以下の比較表では、株式会社・合同会社・合資会社・合名会社の特徴を整理しています。各項目を見比べることで、自分にとって最適な会社形態が見えてくるはずです。
下記の表にも記載しておりますが、実務上「合資会社」と「合名会社」が選択されることはほとんどなく、「株式会社」と「合同会社」のどちらかから選択することがほとんどです。
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 | 合資会社 | 合名会社 |
| 設立費用 | 約24万円(登録免許税等含む) | 約6万円 | 約6万円 | 約6万円 |
| 出資者の責任 | 有限責任 | 有限責任 | 有限責任(有限責任社員)と無限責任(無限責任社員) | 無限責任 |
| 利益配分の自由度 | 出資比率に応じて原則固定 | 自由に設定可能 | 自由に設定可能 | 自由に設定可能 |
| 意思決定の方法 | 株主総会・取締役会など | 社員の合議制 | 業務執行社員の合意 | 社員の全員合意 |
| 信用度 | 高い(上場も可能) | 中程度(非上場) | 低い(設立数が非常に少ない) | 非常に低い(ほぼ利用されない) |
| 融資・資金調達のしやすさ | しやすい | やや不利 | 難しい | 非常に難しい |
| 運営の自由度 | 低め(法的要件多い) | 高い | 高い | 高い |
株式会社の特徴とメリット・デメリット
株式会社は、日本で最も一般的な会社形態で、取引先や金融機関からの信頼性が高く、資金調達の選択肢も豊富です。
会社といえば「株式会社」をイメージする人が多いほど普及しており、出資者(株主)と経営者(取締役)を分ける仕組みが特徴です。スタートアップから大企業まで幅広く活用されており、将来的な上場や大規模な事業展開を見据える場合に選ばれるケースが多く見られます。
株式会社のメリット
● 社会的信用が高い
株式会社は法制度に基づいて厳格に管理されていることから、取引先・金融機関・自治体などからの評価が高くなりやすい傾向があります。たとえば新規取引や融資審査の場面で、「株式会社だから安心できる」という理由で契約がスムーズになることもあります。
● 資金調達の選択肢が豊富
株式会社は「株式を発行して出資を募る」ことができるため、事業の成長段階に応じた資金調達が可能です。エンジェル投資家やベンチャーキャピタルからの出資も視野に入れやすく、柔軟な資金戦略を描けます。
● 経営と出資を分離できる
出資した株主が必ずしも経営に関与する必要はなく、経営は取締役に任せるという構造がとれます。これにより、資本を提供する投資家と、運営を行う経営陣との役割分担が明確になり、意思決定のスピードと質が高まります。
● 上場(IPO)が可能
一定の条件を満たせば、株式を証券取引所に公開し、社会全体から出資を受ける「上場」が可能です。これにより、数十億円単位の大規模な資金調達も実現できます。将来的に上場を目指すスタートアップにとっては、株式会社であることが大前提となります。
株式会社のデメリット
● 設立費用・手続きが複雑
株式会社を設立するには、公証役場での定款認証(約5万円)や登録免許税(最低15万円)など、初期費用が高額になります。また、書類の準備・提出も多く、専門家のサポートが必要になることが一般的です。
● 運営ルールが厳格
会社法により、株主総会・取締役会・議事録の作成・公告義務など、さまざまな法的手続きが義務付けられています。これにより会社運営は法的に安定する反面、手間やコストがかかる点は注意が必要です。
● 利益配分の柔軟性に乏しい
配当金は、原則として出資比率(株式保有割合)に応じて支払う必要があり、実際の貢献度や業績への寄与に応じた分配がしづらい構造です。柔軟な利益調整を行いたい場合は、合同会社のほうが適していることもあります。
合同会社の特徴とメリット・デメリット
合同会社(LLC)は、2006年の会社法改正により創設された比較的新しい会社形態です。設立費用の安さと運営の柔軟性から、個人事業主の法人成りやスタートアップ企業を中心に人気が高まっています。
株式会社とは異なり、出資者がそのまま経営にも関与する「社員」になる点が特徴で、シンプルな組織構造が魅力です。
合同会社のメリット
● 設立費用が安い
合同会社は、定款の認証が不要であることや、登録免許税が株式会社よりも安価であることから、設立コストを抑えられます。初期費用は約6〜10万円と、株式会社(約24万円)の1/3以下で設立が可能です。
● 運営がシンプルで自由度が高い
法定の組織機関(株主総会・取締役会など)が不要なため、社員間の合意だけで自由な運営が可能です。
定款で社内ルールを柔軟に設計できるため、事業内容や規模に応じた最適な運営体制を整えやすいのが特長です。
● 利益配分の自由度が高い
株式会社では出資比率に応じた配当が基本ですが、合同会社では出資割合に関係なく利益を分配できます。たとえば「少額出資でも事業貢献が大きいメンバーに多めに分配する」といった設計が可能です。
● スピード感のある意思決定が可能
出資者=経営者のため、社内での調整や承認プロセスが不要です。経営判断を即座に下せるスピード感は、スタートアップや少人数事業にとって大きな強みです。
合同会社のデメリット
● 信用面で株式会社に劣る場合がある
合同会社は知名度や社会的認知がまだ十分とはいえず、「株式会社でないと不安」という取引先や金融機関の対応に苦慮する場面があります。特にBtoB取引や融資の場面では、株式会社の方が信頼されやすいこともあるでしょう。
● 上場(IPO)ができない
合同会社には株式制度がないため、証券取引所での上場は不可です。将来的にIPOを視野に入れる場合は、最初から株式会社でスタートするか、後に組織変更を検討する必要があります。
● 経営と出資の分離ができない
合同会社では出資者が経営者を兼ねるため、外部の投資家からの出資を受けにくい構造になっています。大きな資本を集めてスケールを目指す場合には不向きな面もあります。
合資会社の特徴とメリット・デメリット
合資会社は、日本の会社法で認められている4つの法人形態のひとつで、有限責任社員と無限責任社員が共存するという特徴を持っています。現代では設立件数が極めて少なくなっているものの、法的には現在でも設立が可能です。
信頼関係の強い少人数ビジネスや、親族・パートナー間の共同経営など、出資と経営を柔軟に分けたいケースにおいて、一定の実用性を持つ形態です。
合資会社のメリット
● 出資と経営のバランスを自由に設計できる
出資だけを行う「有限責任社員」と、経営と責任を担う「無限責任社員」を分けられるため、共同経営の柔軟性が高いです。
● 少人数での信頼型経営に向いている
社内での合意形成がしやすく、内部で強い信頼関係がある場合には、スピーディーな意思決定が可能です。
● 利益配分の自由度が高い
合同会社と同様に、定款の定めによって出資比率に縛られない利益分配が可能です。実際の業務貢献に応じて分配内容を設計できます。
● 株主総会や取締役会が不要
株式会社のような煩雑な会社法上の機関設計が不要で、運営も簡素化できます。
合資会社のデメリット
● 無限責任社員のリスクが大きい
会社が負債を抱えた場合、無限責任社員は個人の財産で弁済責任を負うため、資産リスクが非常に高くなります。
● 社会的信用が低い
合資会社は一般的な認知度が低いため、「法人=株式会社」という固定観念のある取引先や金融機関には敬遠される傾向があります。
● 融資や外部資金調達で不利
株式発行ができず、会社規模の拡大や上場も前提とされていないため、資金調達の選択肢が少ない点も課題です。
合名会社の特徴とメリット・デメリット
合名会社は、日本の会社法における伝統的な法人形態のひとつで、社員全員が無限責任を負うという特徴を持ちます。
近年では設立数が極端に少なく、法人化の主流ではありませんが、法的には現在も有効であり設立可能な会社形態です。社員間に強い信頼関係があり、外部からの出資や上場などを前提としない小規模ビジネスにおいて、一定の実用性を持ちます。
合名会社のメリット
● 設立費用が安く、手続きも簡易
株式会社のような定款認証が不要で、登録免許税も安価。設立にかかる手間や費用は最小限です。
● 経営体制がシンプルで運営しやすい
出資者全員が経営に携わるため、意思決定が迅速かつフラットに行われます。少人数で密に連携するビジネスに向いています。
● 法律上の制約が少なく、自由なルール設計が可能
株主総会や役員の任期など、形式的な義務がほとんどなく、柔軟な運営が可能です。契約や合意によって運営スタイルを決められます。
合名会社のデメリット
● 無限責任による個人資産へのリスク
社員全員が無限責任を負うため、会社が債務超過や倒産に陥った場合は、個人財産によって弁済義務を負うリスクがあります。
● 社会的信用力が極めて低い
合名会社という形態自体が一般に知られておらず、法人としての信頼性に欠けるという評価を受けることが多いです。契約や取引で不利になる可能性があります。
● 資金調達の選択肢が乏しい
株式発行などの手段がなく、ベンチャーキャピタルや金融機関からの資金調達には不向きです。個人間の持ち寄り資金で小規模に運営する前提となります。
● 現代のビジネス環境に適しにくい
外部ステークホルダーとの関係性、責任の明確化、ガバナンス体制の構築などが求められる現代の経営にはマッチしにくい構造です。
よくある会社形態の違いと混同しやすいポイント
会社設立を考える際には、さまざまな用語や分類の違いが混同されやすく、判断を難しくしている原因にもなります。
ここでは、特に誤解の多い「法人と会社の違い」「法人と個人事業主の違い」を整理して解説します。
法人と会社の違い
法人とは?
法人とは、法律上「人」として扱われる存在のことです。人間のように、契約を結んだり、財産を所有したり、訴訟の当事者になることができます。つまり、「人間ではないが、法的には人と同等の権利義務を持つ存在」です。
たとえば、会社名義でオフィスを借りたり、口座を開設したり、業務委託契約を結ぶことが可能です。
会社とは?
会社は、法人の中でも「営利」を目的として設立される組織体です。つまり、法人の一部に含まれる存在です。具体的には、以下のような種類があります。
- 株式会社
- 合同会社(LLC)
- 合資会社
- 合名会社
これらはいずれも営利法人として、利益を上げて事業を継続することを目的としています。
法人と個人事業主の違い
次に混同されやすいのが、「法人」と「個人事業主」の違いです。
| 比較項目 | 法人(例:株式会社・合同会社) | 個人事業主 |
| 法的地位 | 独立した「法人格」が権利義務を持つ | 個人がそのまま事業主体 |
| 責任の範囲 | 資本金として出資した金額の範囲内(有限責任) | 全責任を個人が負う(無限責任) |
| 節税のしやすさ | 役員報酬や経費処理が柔軟、法人税対応可 | 所得税が中心、利益が増えると税負担が重くなる |
| 信用度 | 高い(法人名義で契約・融資がしやすい) | 個人名義での契約になるためやや不利 |
| 設立・運営手続き | 複雑(登記、決算申告、税務管理など) | 比較的シンプル(税務署に開業届) |
法人は「法人税」、個人事業主は「所得税」が課税対象です。所得が増えてくると、法人化のほうが節税効果が見込めるケースが多くなります。
また、法人名義の方が社会的信用が高いため、法人化によって融資や業務委託の条件が有利になることがあります。
会社形態を選ぶ際のポイントと注意点
会社を設立する際には、ただ形態の名前を選ぶだけではなく、自社の将来像や事業モデルに合った形態を選ぶことが重要です。
それぞれの会社形態にはメリットとリスクがあり、設立費用・責任の範囲・節税のしやすさ・運営の自由度などを総合的に比較検討する必要があります。
設立にかかる費用
起業初期の資金状況を踏まえ、初期コストを抑えたい場合は合同会社が有力な選択肢となります。
- 株式会社:定款認証や登録免許税など、初期費用は約20〜25万円。
- 合同会社:定款認証が不要なため、6〜10万円程度で設立可能。
- 合資会社・合名会社:設立費用自体は安価だが、実用性や信用面に課題あり。
個人資産リスク
個人資産リスクを最小限に抑えたい場合は、株式会社か合同会社が安全です。
- 株式会社・合同会社:いずれも有限責任。万が一倒産しても、出資額以上の責任は原則負わず。
- 合資会社・合名会社:無限責任を負う社員がいるため、個人資産へのリスクあり。
税務・会計の対応しやすさ
将来的に役員報酬の最適化や法人保険、株主対策など高度な節税戦略を取り入れたい人には株式会社、まずはシンプルな経費管理や所得分散による節税を実践したい人には合同会社がおすすめです。
株式会社:
・節税制度が豊富で、役員報酬や経費計上を活用した戦略が立てやすい
・税務処理や会計帳簿の整備が求められるため、やや複雑な運用になる
・顧問税理士やクラウド会計(freee、マネーフォワード等)の導入が前提となるケースが多い
・上場を見据えた厳格な会計処理が可能
合同会社:
・法人税や消費税などは株式会社と同様に適用され、節税面でも十分な効果が見込める
・設立時の自由度が高く、会計処理も比較的シンプルに管理できる
・クラウド会計との相性が良く、スモールビジネスやスタートアップにも最適
・少人数体制での運用に向いており、税務対応の柔軟性が高い
自分に合った会社形態がわからない方へ
「株式会社と合同会社、どちらが自分に向いているのか?」「費用を抑えたいけど将来的な信用も大切…」そんなお悩みを抱える方は少なくありません。
事業のステージや将来のビジョン、資金状況、節税の考え方などによって、最適な会社形態は変わります。また、設立後の税務対応や経理業務にも影響が及ぶため、慎重な判断が求められます。
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- 初めての法人設立でも安心。丁寧なヒアリングと実務的アドバイスで、最適な会社形態を一緒に選びます。
- 設立後の会計・税務対応もワンストップで支援。
- クラウド会計やリモート対応にも強く、全国どこからでもサポート可能。
まとめ
会社形態の選択は、事業の立ち上げや成長戦略に深く関わる重要な判断です。
- 信用力や資金調達を重視するなら「株式会社」
- コストや運営の自由度を優先するなら「合同会社」
- 現状、「合資会社」や「合名会社」での会社設立はほとんど選択されておりません。
迷った場合は、専門家に相談しながら事業に最適な形態を選ぶようにしましょう。