設立時取締役とは?役割・選任・登記・注意点まで徹底解説
会社設立の際に必ず登場するのが「設立時取締役」です。
「通常の取締役とどう違うの?」「選任方法や必要書類は?」「就任承諾書って何?」といった疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
設立時取締役は、会社の立ち上げにおいて重要な役割を担う存在であり、手続きや書類に関するミスがあると、登記が受理されないなどのトラブルにも発展しかねません。
この記事では、設立時取締役の基本的な定義から、選任方法・定款や登記に関する実務・就任後の対応までをわかりやすく解説します。
これから会社設立を考えている方、すでに準備中の方はぜひ最後までご覧ください。
目次
設立時取締役とは?定義と基本概要
会社を設立する際には、最初に「設立時取締役」という役割を決める必要があります。
この章では、設立時取締役の意味や法律上の位置づけ、なぜ必要なのかといったポイントを解説します。
設立時取締役とは
「設立時取締役」とは、会社がまだ存在していない段階で選ばれる最初の取締役のことです。会社法では、会社を作るときに必ず取締役を決めるよう定められており、その役職を担うのが設立時取締役です。
会社が設立される前の準備段階から、すでに経営に関わる役割を担うため、とても重要なポジションといえます。
会社法上の定義と役割
設立時取締役は、会社法第38条に基づいて選ばれます。
会社設立に関わる様々な手続きをリードし、「創立総会」では以下のような内容を決める役割があります。
- 定款(会社のルール)の最終確認
- 取締役や監査役の選任
- 事業計画や資本金の内容の承認
登記申請を行う際には、就任承諾書や印鑑証明書の提出、各種書類への署名押印なども必要になります。つまり、設立時取締役は「会社設立の責任者」として、実務と法務の両方に関わる中心的な存在です。
なぜ設立時取締役が必要なのか
会社は、設立登記が完了してはじめて“法人格”を持ちます。そのため、それまでは会社としての正式な意思決定はできません。
そこで、設立前から会社の方向性や準備を進めるために、あらかじめ設立時取締役を選任しておく必要があります。
この役職があることで、以下のようなスムーズな流れが実現できます。
- 出資の手続きや資本金の払込み
- 定款認証・創立総会の開催
- 登記申請とその後の運営準備
特に、会社を立ち上げる初期段階では、迅速な判断と実行力が必要な場面が多く、設立時取締役の存在が欠かせません。
設立時取締役の人数と注意点
設立時取締役を選任する際、「何人まで選んでよいのか?」「人数によるリスクはあるのか?」という疑問を持つ方も多いでしょう。
この章では、設立時取締役の人数に関する基本ルールと、人数を増やす際の注意点について解説します。
設立時取締役の人数制限はない
設立時取締役の人数には、法的な上限はありません。会社法上は、株式会社の取締役は最低1名いれば設立可能であり、複数名選任することも可能です。したがって、会社の実情や意思決定の仕組みに応じて、柔軟に人数を決めることができます。
ただし、発起人が1名しかいない場合でも、設立時取締役を複数名選任することも可能であり、その場合は発起人によってすべての設立時取締役が選任される形になります。
取締役を多くしすぎると調整や意思決定が煩雑になるリスクも
設立時取締役を複数名選任することは可能ですが、人数が多すぎると調整や意思決定が煩雑になるリスクがあります。
たとえば、創立総会における決議や、就任承諾書・印鑑証明書の取得・提出などの手続きがすべての取締役に必要となり、事務処理の負担が増加します。
また、取締役としての責任も全員に課されるため、将来的に辞任や解任の手続きを行う際にも複雑化する可能性があります。とくに、名義貸しのような形で設立時取締役に名前だけ加えることは、後のトラブルの原因になるため注意が必要です。
設立時取締役と発起人・取締役の違い
「設立時取締役」と似た立場として混同されやすいのが「発起人」や「通常の取締役」です。この章では、それぞれの立場の違いを整理し、役割や責任範囲についてわかりやすく解説します。
設立時取締役と発起人の違い
発起人とは、会社の設立を発案し、定款を作成して出資を行い、設立手続き全体を担う者を指します。一方、設立時取締役は、発起人が選任する「会社の最初の経営責任者」です。
| 項目 | 発起人 | 設立時取締役 |
| 役割 | 会社設立の推進者 | 初期の取締役として意思決定を行う |
| 必要人数 | 1人以上(法人も可) | 1人以上(法人不可) |
| 就任のタイミング | 設立手続き全体を通じて関与 | 設立前に選任され、登記後に就任 |
| 責任 | 出資義務・定款作成など | 会社の業務執行・登記申請など |
※なお、同一人物が発起人かつ設立時取締役になることも一般的です。
設立時取締役と通常の取締役の違い
設立時取締役は、会社設立の時点で選任される「初代取締役」です。それに対し、通常の取締役(以後、取締役)は、会社が設立された後に選任される、継続的な経営を担う役員です。
| 項目 | 設立時取締役 | 通常の取締役 |
| 選任時期 | 設立前(発起人が選任) | 設立後(株主総会などで選任) |
| 登記との関係 | 登記申請に必須の存在 | 登記後に就任・変更も可能 |
| 役割 | 設立初期の経営・登記 | 継続的な経営と意思決定 |
| 任期の起算 | 原則、設立日からスタート | 就任日から起算(変更可) |
このように、設立時取締役は「設立準備・初期運営」の役割に限定される場合もありますが、会社設立後もそのまま通常の取締役や代表取締役に移行するケースがほとんどです。
設立時取締役の選任方法と注意点
設立時取締役を誰にするかは、会社設立における最も大事なポイントのひとつです。この章では、選任の時期・手続き、注意点、実務書類について詳しく解説します。
選任日と決議手順
設立時取締役の選任は、会社設立の直前に発起人によって行われます。この際の選任日は、定款認証日と一致またはそれ以降となるのが一般的です。なぜなら、定款が確定して初めて設立準備の具体的な行動が取れるためです。
選任は「発起人全員の同意」によって決議され、その内容は「設立時取締役選任及び本店所在場所決議書」などに記録されます。
選任のための決議書サンプル
以下は、設立時取締役選任の決議書の一例です。
| 【設立時取締役選任及び本店所在場所決議書】
発起人〇〇〇〇は、株式会社〇〇〇〇の設立に際し、以下の通り設立時取締役を選任し、本店の所在場所を次のとおり定めた。
令和〇年〇月〇日 |
このような文書は、登記の際に添付する場合がありますので、正確な記載と日付管理が重要です。
設立時監査役との兼任はできない
会社によっては、設立時監査役を設置するケースもあります。この場合、設立時監査役の選任も設立時取締役と同様に、発起人が行います。ただし、設立時監査役と設立時取締役の兼任はできません(利害対立を避けるため)。
さらに、設立後の監査体制(監査役会の設置、会計監査人の有無など)によって、設立時に必要な手続きや文書が変わるため、事前に定款内容と連動させた設計が必要です。
設立時取締役の定款記載・就任承諾書
設立時取締役を選任した後には、定款への記載や就任承諾書の準備といった対応が必要です。
この章では、記載の要否や書類の扱い、注意点について詳しく解説します。
定款への記載は「任意的記載事項」
会社法上、設立時取締役は「定款の任意的記載事項」に分類されます。つまり、定款に設立時取締役の氏名・住所等を記載する義務はありません。
ただし、定款に記載しておくことで、後々の登記や内部文書との整合性がとりやすくなるため、実務上は記載されるケースが一般的です。
なお、定款に記載する場合は、以下のような形式で記載します。
| 第〇条 当会社の設立に際して選任された取締役は、次のとおりとする。 設立時取締役:〇〇〇〇(住所:〇〇市〇〇) |
就任承諾書の提出有無と書き方
登記申請の際には、各設立時取締役からの「就任承諾書」が必要です。この書類は、設立にあたって取締役として就任する意思があることを明文化するものであり、商業登記規則第61条により提出が義務付けられています。
【就任承諾書の基本構成】
- 文面:「私は、設立時取締役に選任されたことを承諾します。」
- 氏名・住所・押印
- 日付(選任日と一致)
【注意点】
- 原則、印鑑証明書を添付(本人確認のため)
- 電子定款を用いる場合でも、紙での提出が必要なケースあり
- 記載日が登記申請日よりも後にならないよう注意が必要
印鑑証明書や添付書類の実務例
就任承諾書の提出にあわせて、設立時取締役各人の印鑑証明書が必要です。原則、3ヶ月以内に取得したものが有効とされており、就任承諾書とセットで提出します。
また、ケースによっては以下の添付書類も求められることがあります。
- 設立時取締役選任及び本店所在場所決議書
- 設立時監査役の就任承諾書(設置会社の場合)
- 調査報告書および附属書類(募集設立の場合など)
こうした添付書類の不備や形式ミスが、登記の遅延や不受理につながる可能性があるため、事前に専門家への相談をおすすめします。
設立時取締役の登記手続き
定款への記載や就任承諾書の対応が終わったら、次に必要なのが商業登記です。
この章では、登記のタイミングや必要書類、不備によるリスク、近年注目されている「クラウド登記」の動向までをまとめて解説します。
登記は2週間以内に行う必要あり
会社法第911条などに基づき、会社設立にあたっては「設立時取締役の就任を含む設立登記」を、本店所在地で2週間以内に申請する必要があります(※休日を除く)。
この登記が完了して初めて、法人格が与えられ、会社として正式に活動を開始できる状態となります。2週間を過ぎてしまうと、登記が受理されない・やり直しになるといったリスクもあるため、スケジュール管理が非常に重要です。
不備があった場合のリスクと対処法
登記に関する書類でよくある不備には、以下のようなものがあります。
- 就任承諾書に記載ミスや日付の不一致がある
- 印鑑証明書の添付漏れや有効期限切れ
- 選任決議書の日付が定款認証日より前になっている
- 定款に記載された内容と登記内容に食い違いがある
こうした不備は、法務局からの補正指示や再提出を招く原因となり、設立スケジュール全体に悪影響を及ぼします。
不安がある場合は、専門家(税理士・司法書士等)に事前チェックを依頼することを強くおすすめします。
クラウド登記もおすすめ
近年は、紙でのやりとりだけでなく、電子定款+電子署名+オンライン申請による「クラウド登記」が普及しつつあります。これにより、印紙代の節約(定款の印紙4万円が不要)や、郵送作業の削減、手続きの迅速化などが実現可能です。
明治通り税理士法人のようにクラウド対応に強い士業を活用すれば、全国対応・非対面でのスムーズな会社設立が実現できます。
会社設立後の設立時取締役の扱い
設立時取締役は、会社設立前に選任される役員ですが、設立後も重要な役割を担うことが一般的です。ここでは、会社設立後の設立時取締役の立場や役割の変化について解説します。
設立後は代表取締役・取締役になる?
多くの場合、設立時取締役はそのまま「初代の取締役」や「代表取締役」として会社経営を担います。特に小規模な会社では、発起人=設立時取締役=代表取締役 という形が一般的です。
なお、設立後に役員構成を変更する場合は、株主総会の開催や新たな登記申請が必要になります。そのため、設立時点で慎重にメンバーを決めておくことが、後の手間やコストを減らすポイントとなります。
役員としての任期・報酬・責任は?
設立時取締役は、登記が完了すると「通常の取締役」として扱われ、そのまま任期がスタートします。任期は原則として非公開会社であれば最長10年、公開会社であれば2年と定められています(定款で短縮可能)。
報酬については、株主総会の決議で定めるのが一般的です。また、設立時から取締役に就任することで、会社の法的責任や債務への対応などにも一定の責任が生じるため、リスクマネジメントの観点も必要です。
辞任・変更時の注意点は?
設立後に設立時取締役を変更(辞任・解任)する場合は、次のような対応が必要になります。
- 辞任届の提出(取締役本人から会社宛に提出)
- 株主総会での承認(必要に応じて)
- 変更登記の申請(法務局へ)
特に、辞任後に代表取締役が不在になる場合は、後任の選任と登記を速やかに行わなければ、会社としての活動が制限されるリスクもあるため、注意が必要です。
明治通り税理士法人ができるサポート
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設立時に必要となる取締役の就任承諾書や印鑑証明、定款の記載内容についても、会社法や税務の観点から専門スタッフが丁寧にチェックし、リスクのない形で設立できるようサポートいたします。
さらに、設立後すぐに必要となるクラウド会計ソフトや税務ソフトの導入支援もセットで行い、経理・税務体制の整備まで一貫してご対応。経営のスタートを安心して切れるよう、実務面でも徹底的に伴走いたします。
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まとめ
設立時取締役は、会社設立における実務・法務両面の中核的な存在です。選任から登記、設立後の運営まで、すべてのフェーズで重要な役割を果たします。
起業家や中小企業の方にとって、法務や登記の細かい手続きまで自力で対応するのは負担が大きいものです。そのため、クラウド対応に強い士業と連携することが、最短・最適な会社設立への近道となります。
お困りの方は明治通り税理士法人にぜひご相談ください。