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投稿日:2025.11.07

のれん勘定科目の基本と仕訳|減損・償却まで徹底解説

「のれん」という言葉を聞いたことはあっても、実際にどのような意味を持ち、会計処理ではどう扱うのか、よくわからないという方も多いかもしれません。

のれんとは、企業を買収したときに、その会社が持つ目に見えない価値、たとえばブランド力や顧客との関係、立地の良さ、ノウハウなどをお金で表したものです。

ただし、のれんは時間の経過や企業の状況によって価値が変わるとされており、一定のルールに従って償却や減損といった処理を行う必要があります。さらに、日本の会計基準と国際的なIFRS(国際会計基準)とでは処理方法に違いがあります。

この記事では、のれんの基本的な意味から勘定科目での位置づけ、具体的な仕訳方法、そして減損や償却の実務処理までをわかりやすく解説します。

のれんとは?

会計の中で「のれん」とは、企業を買収する際に、その会社が持つ純資産よりも高い金額で購入したときに生まれる差額のことです。これは、目に見える現金や設備などではなく、「ブランド力」「お客さんとの関係」「立地の良さ」「独自のノウハウ」など、数字では表しにくい価値をお金に換算したものです。

たとえば、ある企業の純資産が1,000万円だったとして、その企業を1,500万円で買収した場合、500万円の差があります。この500万円が「のれん」として扱われます。つまり「のれん」は、過去にその企業が積み上げてきた目に見えない強みを表すものです。

「のれん」は、会社の資産の一部として貸借対照表に記載されます。ただし時間の経過とともに価値が下がると考えられるため、一定期間で少しずつ費用として計上されたり、価値が下がったと判断されれば減らす処理(減損)を行ったりします。

なお、この処理方法にはルールがあり、日本の会計基準と、海外で使われる国際会計基準(IFRS)では対応が異なります。

のれんの勘定科目|どこに分類される?

のれんは、会計処理の中でどのように扱われ、どの勘定科目に分類されるのでしょうか。この章では、のれんの分類、帳簿上での位置づけ、実務での処理方法についてわかりやすく紹介します。

のれんは資産項目である

のれんは、企業が将来的に利益を生み出すと期待される目に見えない価値のことです。現金や建物のような形のある資産とは違いますが、将来の利益につながる可能性があるため、会計上では「資産」として扱われます。

会計帳簿の中では、貸借対照表(バランスシート)の「資産の部」に記載され、より具体的には「固定資産」→「無形固定資産」→「のれん」という流れで表示されます。

勘定科目としての位置づけ

帳簿上や会計ソフト上でのれんを記載する際には、いくつかの表記方法があります。たとえば、「のれん」とそのまま記載するのが一般的ですが、会社によっては「営業権」と呼ぶこともあります。また、「無形固定資産 のれん」といったように、分類ごとに階層化して表すケースも見られます。

これらの勘定科目の名前は企業の会計方針や使用しているソフトによって若干異なりますが、いずれも「資産」として処理される点は共通です。

なお、のれんは減価償却の対象ではないと誤解されることがありますが、日本の会計基準では一定の年数をかけて費用として計上(償却)することが求められています。この内容については、後の章で詳しく解説します。

会計ソフトでの処理例

最近では、マネーフォワードやfreeeといったクラウド会計ソフトを使って経理処理を行う企業も増えています。こうしたソフトでは、あらかじめ「のれん」や「無形固定資産」といった勘定科目が登録されていることが多く、仕訳入力時に選択するだけで処理できるようになっています。

このような機能を活用することで、会計処理の手間を減らしたり、科目名の入力ミスを防いだりすることができます。ただし、償却期間の設定などは自社で判断が必要なため、導入時には注意が必要です。

のれんの償却と減損|日本基準とIFRSの違い

のれんは、買収後の会計処理において「償却」や「減損」といった対応が必要になります。この章では、日本基準での取り扱いと、国際会計基準(IFRS)との違いについてわかりやすく説明します。

日本基準におけるのれんの償却

日本の会計基準では、のれんは「無形固定資産」のひとつとされており、将来的に価値が減っていくものとして一定の期間で償却することが求められています。具体的には、20年以内の合理的な年数を設定し、毎年同じ金額で償却していく「定額法」が原則です。

たとえば、買収によって1,000万円ののれんが発生した場合、10年間で償却する設定にすれば、毎年の償却額は100万円となります。帳簿上は、「のれん償却費」または「のれん償却額」といった勘定科目を使って記録します。

償却された費用は、損益計算書の中で「販売費および一般管理費」に含まれ、企業の当期の利益を圧迫する要因のひとつになります。

のれんの減損処理

ここでは、のれんの価値を見直す「減損処理」について説明します。

のれんの減損とは、企業が将来十分な利益を出せないと判断されたときに、その価値を減額して帳簿に反映する処理のことです。たとえば、買収先の事業が想定よりも早く業績悪化した場合や、事業環境が大きく変化したときなどが該当します。

その場合は、のれんの帳簿価格を現実的な水準まで引き下げる必要があります。仕訳の一例としては、「減損損失〇〇円/のれん〇〇円」という形で記録されます。

減損損失は損益計算書に直接反映されるため、企業の利益に対して大きなインパクトを与える場合があります。

IFRS(国際会計基準)との違い

次に、国際会計基準(IFRS)との違いについて紹介します。

IFRSでは、日本基準と異なり、のれんを定期的に償却することは行いません。代わりに、毎年「減損テスト」を実施するという方針がとられています。このテストでは、のれんがまだ価値を持っているかどうか、つまり将来的にその投資額を回収できる見込みがあるかを確認します。

もしその価値が回収可能な金額を下回っていると判断されれば、その分だけ帳簿価格を減らす処理を行います。減損が発生しない限りは、のれんの金額は減らされずに残るため、償却が不要な分、企業の利益には比較的影響を与えにくい特徴があります。

このように、IFRSの方法は、のれんの価値が実際に下がるまではそのまま保持するという考え方に基づいており、企業の実態をより正確に反映しようとする目的があります。

中小企業や非上場企業における留意点

日本の「中小企業会計指針」では、のれんは5年以内の比較的短い期間で償却することが望ましいとされています。実際の現場では、会計ソフトの初期設定に従って自動で処理していることも多くありますが、それがそのまま正しいとは限りません。

たとえば、償却期間の設定が不適切だったり、減損処理が漏れていたりするケースでは、税務調査の際に指摘を受ける可能性があります。そのため、のれんの会計処理にあたっては、企業の実情に合わせた判断や、専門家のアドバイスが非常に重要です。

のれんの仕訳例と処理パターン

のれんは、企業を買収したときなどに発生し、その後も会計処理が必要となる項目です。発生したとき、償却するとき、価値が下がったとき(減損)、さらには買収額が安すぎたとき(負ののれん)など、状況によって処理方法が変わります。

ここでは、それぞれの場面でどのような仕訳をするのかをわかりやすく紹介します。

のれんが発生したときの仕訳(M&A時)

企業を買収したときに、その会社の純資産よりも高い金額で買い取ることがあります。このとき、その差額が「のれん」として計上されます。

たとえば、純資産が1,000万円の会社を1,500万円で買収した場合、のれんは500万円になります。この場合の仕訳は以下のとおりです。

(借方)資産(現金・備品など) 1,000万円
(借方)のれん          500万円
(貸方)現金           1,500万円

このように、目に見える資産とともに、のれんも企業の資産として計上されます。

のれんの償却時の仕訳(日本基準)

のれんは、一定の年数にわたって費用として計上していく必要があります。これを「償却」といいます。

たとえば、5,000万円ののれんを10年で償却する場合、毎年の償却額は500万円になります。以下のように仕訳されます。

(借方)のれん償却費  500万円
(貸方)のれん     500万円

この償却費は、損益計算書の中で「販売費および一般管理費」に含まれ、企業の利益を減らす要因のひとつになります。

なお、使用する勘定科目の名前は「のれん償却額」や「のれん償却費」など、企業の会計方針やソフトによって異なることがあります。

のれんの減損処理の仕訳

のれんの価値が実際にはそこまで高くないと判断された場合には、「減損」という処理を行います。これは、帳簿に記載されている金額を現実の価値に合わせて減らす作業です。

たとえば、のれんの帳簿上の金額が2,000万円だったものの、実際の価値は1,500万円だと判断された場合、その差額500万円を減額します。

(借方)減損損失    500万円
(貸方)のれん     500万円

減損損失は損益計算書に記載されるため、企業の当期の利益に大きな影響を与えることになります。

負ののれんが発生した場合の仕訳

まれに、企業を買収した際の金額が、その企業の純資産よりも安くなることがあります。このような場合に発生するのが「負ののれん」です。

たとえば、純資産が2,000万円の企業を1,800万円で買収した場合、その差額200万円が「負ののれん発生益」として特別利益になります。

(借方)資産(現金など) 2,000万円
(貸方)現金       1,800万円
(貸方)負ののれん発生益  200万円

このように、負ののれんは利益として扱われ、損益計算書では「特別利益」に含まれることになります。

会計ソフトでの入力におけるポイント

最近では、freeeやマネーフォワードといったクラウド型の会計ソフトを使って処理をしている企業も多くなっています。これらのソフトでは、「のれん」や「のれん償却費」などの勘定科目があらかじめ登録されているため、入力時の選択ミスを防ぎやすくなっています。

ただし、ソフト任せにするのではなく、償却期間の設定や勘定科目の分類などが自社の会計方針に合っているかを確認することが重要です。特に期末の決算時には、設定ミスが後のトラブルにつながらないように注意しましょう。

ケース別のれんの扱い

のれんの処理は、業種や企業の規模、取引の内容によって変わってきます。ここでは、実際の事例に即して、どのようにのれんを処理し、勘定科目を使い分けるのかを紹介します。

飲食店・小売業の場合

ここでは、飲食店や小売業などが店舗ごとに営業権を引き継ぐ場合の「のれん」の扱いについて紹介します。

たとえば、店舗の立地条件やブランド、常連のお客さんといった営業上の価値を含めて事業を引き継いだ場合、それらの目に見えない価値が「のれん」として認識されます。会計上は、無形固定資産として資産に計上します。

このようなケースでは、「のれん」や「営業権」といった勘定科目を使用します。中小企業会計指針では、5年から10年の間で定額で償却することが推奨されています。

なお、店舗を移転したり閉鎖したりした場合には、のれんの価値が失われたと判断されることがあり、その場合は「減損処理」が必要になることがあります。

個人事業主が事業譲渡を受けた場合

ここでは、個人事業主が他の事業を買い取った場合の「のれん」の扱いについて紹介します。

法人と異なり、個人事業主の会計処理には明確なルールが少ないため、のれんの計上には注意が必要です。金額の内訳が明確になっていれば、法人と同様に「のれん」や「営業権」として処理することが可能です。

ただし、税務署からその処理が認められない場合もあるため、契約書に営業権の金額を明記しておくことが非常に重要です。実務上は、税理士に相談しながら進めることが推奨されます。

よくある質問(FAQ)

のれんは資産?それとも費用?

のれんは「無形固定資産」として、貸借対照表に計上される資産項目です。ただし、一定期間で償却または減損処理を行うため、最終的には損益計算書に影響します。日本基準では償却あり、IFRSでは毎期減損テストのみが行われます。

のれんは何年で償却すべき?

 一般的には20年以内の合理的な期間で償却しますが、中小企業では5年以内が推奨されます。具体的な年数は、のれんの経済的価値の持続年数や業種特性などに基づき決定されます。

日本基準とIFRSでは、のれんの扱いにどんな違いがありますか?

 最大の違いは「償却するか否か」です。

  • 日本基準:定額で償却する
  • IFRS:償却せず、毎期「減損テスト」を行う

負ののれんはどんな科目で処理する?

負ののれんは「負ののれん発生益」または「特別利益」として、損益計算書に計上されます。取得対価が純資産を下回る場合に発生し、企業にとっては“得をした”ことになるため、利益扱いとなります。

のれんの勘定科目名は会社によって異なる?

 一般的には「のれん」ですが、「営業権」などの名称を使う企業もあります。会計ソフトや会計方針に応じて、科目名は若干異なるケースがあります。ただし、税務申告や財務諸表においては、分類上の位置づけ(無形固定資産)を明確にすることが重要です。

明治通り税理士法人ができること

会計・税務の専門家として正確な処理を支援します

のれんの会計処理や勘定科目の判断について、当法人では最新の会計基準および実務動向に基づいた的確なアドバイスを行っています。

償却期間の設定や減損の判断、会計ソフトへの正しい入力方法まで、ひとつひとつ丁寧にご説明しながら、誤りのない処理をサポートいたします。

中小企業・個人事業主の実情に合わせた柔軟な対応が可能です

明治通り税理士法人は、これまでに多くの中小企業・個人事業主のお客様からご相談をいただいてまいりました。その経験を活かし、規模や業種に応じた現実的で実務に即したご提案を行います。

事業譲渡に伴うのれんの計上や、税務署とのやり取りを見据えた書類整備なども、安心してお任せください。

クラウド会計にも対応。全国どこでもご相談いただけます

freee・マネーフォワードなどのクラウド会計ソフトにも対応しており、初期設定から運用改善までサポートいたします。

オンライン面談・チャット・メールを活用し、全国どこにいらっしゃるお客様でも、距離を感じさせないスムーズな対応を実現しています。

はじめての方も安心。身近に相談できるパートナーです

明治通り税理士法人では、「なんでも相談できるパートナーでありたい」という思いを大切にしています。のれんに限らず、日々の経理や決算、確定申告、法人設立や資金繰りなど、税務・会計に関するあらゆるお悩みに寄り添いながら対応いたします。

まとめ

「のれん」は、企業のブランド力や収益力など目に見えない価値を数値化した重要な資産です。特にM&Aや事業譲渡など、企業の大きな転換点に関わる場面で発生し、財務諸表や税務処理にも大きな影響を与える存在です。

のれんの勘定科目としての位置づけや償却・減損の処理方法を誤ると、決算書の信頼性が損なわれるだけでなく、税務リスクや監査指摘につながる可能性もあります。

以下のような点を押さえて、正確な処理を心がけましょう。

  • のれんは「無形固定資産」として貸借対照表に計上
  • 日本基準では定額法による償却が原則
  • 減損が必要な場合は、タイミングを見誤らない
  • 会計ソフトの勘定科目設定・入力ミスにも注意
  • IFRS適用企業は「減損テスト」の実施が必要

専門的な内容も多いため、処理に不安がある場合は、税理士や会計士などの専門家に相談することが最も確実です。

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