棚卸減耗損の仕訳を徹底解説|計算方法と実務例も紹介
決算や棚卸作業の際、「帳簿の在庫数と実地棚卸の数量が一致しない」という場面に直面したことはありませんか?
こうしたズレによって発生するのが「棚卸減耗損」です。そして、この棚卸減耗損に対して適切な「仕訳処理」を行うことは、正確な財務諸表の作成や税務上のトラブル回避に直結します。
しかし実務上では、「売上原価として処理すべきか?」「異常な減耗損はどの勘定科目にすればいいのか?」「棚卸益が出た場合はどうするのか?」といった判断で迷う場面が多くあります。
本記事では、棚卸減耗損とは何かという基本から、具体的な仕訳方法、さらには実務でよくあるケース別の処理方法までを丁寧に解説します。
棚卸減耗損とは?
棚卸減耗損(たなおろしげんもうそん)とは、帳簿上の在庫数量と、実際に数えた在庫数量(実地棚卸)との間に差があったときに、その差に応じて計上する損失のことです。
たとえば次のようなケースで発生します。
- 商品の紛失や盗難
- 破損や劣化による廃棄
- 誤出荷、記帳ミス
帳簿上には存在しているはずの在庫が、実際には存在しない状態であり、「数量のズレ」が原因になります。このような減少分については、会計処理として売上原価、販売費および一般管理費、または特別損失として扱う必要があります(詳しくは後述します)。
ここでは、棚卸減耗損の基礎知識と、よく混同されやすい「棚卸評価損」との違いについて紹介します。
棚卸減耗損と棚卸評価損の違い
棚卸減耗損と棚卸評価損は、どちらも在庫に関する損失ですが、発生の原因と会計処理方法が異なります。
| 比較項目 | 棚卸減耗損 | 棚卸評価損 |
| 原因 | 数量の減少(在庫が減った) | 単価の下落(価値が下がった) |
| 具体例 | 紛失、盗難、破損など | 市場価格の下落、不良在庫など |
| 処理方法 | 実地棚卸による数量差を調整 | 時価評価により金額を減額 |
| 使用する勘定科目 | 売上原価、販売費および一般管理費、特別損失など | 商品評価損、売上原価など |
どちらも「在庫が減っている」という意味では似ていますが、棚卸減耗損は「在庫が物理的に存在しない」、棚卸評価損は「価値が下がっただけで在庫はある」点が大きな違いです。
それぞれ正しく処理しないと、決算や税務で誤解を招く原因となるため、しっかり区別しておきましょう。
棚卸減耗損の計算方法
棚卸減耗損は、帳簿に記録されている在庫数量と、実際に数えた在庫数量(実地棚卸)に差があるとき、その差に単価をかけて金額を算出することで求めます。この計算は、決算時の在庫評価や損益に大きな影響を与えるため、正確に行うことがとても大切です。
ここでは、棚卸減耗損をどのように計算するのか、その手順をわかりやすく紹介します。
帳簿と実地の差異を把握する
はじめに、帳簿に記載されている在庫数量と、実際に棚卸をして確認した在庫数量を比べて、どれだけの差があるのかを確認します。
たとえば、帳簿には100個と記載があったのに、実際には95個しかなかった場合、その差である5個が棚卸減耗数量となります。
計算式は以下のとおりです。
棚卸減耗数量 = 帳簿在庫数量 − 実地棚卸数量
このように、帳簿の在庫の方が多い場合に「在庫が足りない=棚卸減耗が発生した」と判断されます。
単価×差異数量で金額を求める
次に、先ほど求めた棚卸減耗数量に、1個あたりの単価をかけて、実際の金額を計算します。
棚卸減耗損 = 棚卸減耗数量 × 評価単価
ここで使う「単価」は、商品の種類や評価方法によって異なるため、正しい方法で選ぶ必要があります。次に、その評価単価をどう決めればよいかを紹介します。
減耗損の評価単価を決める
評価単価とは、棚卸減耗数量にかける「1個あたりの金額」です。この単価の決め方にはいくつかの方法があり、会社や商品によって選び方が変わります。
主な評価方法は以下の3つです。
- 移動平均法:仕入のたびに単価を平均していく方法
- 最終仕入原価法:一番最後に仕入れた金額を単価にする方法
- 個別法:個別の商品ごとに単価を決める方法(高額品などに多い)
どの方法を使うかは会社ごとに決めることができ、税務上は「毎年同じ方法で計算し続けること(継続適用)」が求められます。毎年コロコロ変えると、税務署から指摘される可能性もあるため注意が必要です。
移動平均法とは?
移動平均法(いどうへいきんほう)は、商品を仕入れるたびにその都度、単価を見直して平均をとっていく方法です。たとえば、同じ商品を何度も仕入れるような場合に使われることが多く、在庫の変動が多い小売業や製造業でもよく使われます。
【具体例】
- 1回目に10個 × 単価100円で仕入れ → 平均単価は100円
- 2回目に10個 × 単価120円で仕入れ → 合計20個・合計2,200円 → 平均単価は110円
- 3回目に10個 × 単価90円で仕入れ → 合計30個・合計3,100円 → 平均単価は103.3円
このように、新しい仕入れがあるたびに「その時点の平均単価」を更新していきます。計算は少し手間ですが、実際の在庫状況に近い金額で管理できるというメリットがあります。
最終仕入原価法とは?
最終仕入原価法(さいしゅうしいれげんかほう)は、その期の中で一番最後に仕入れたときの単価を使って計算する方法です。たとえば、決算時に在庫を評価する際、いくつか仕入れがあった場合でも、最後に仕入れた単価だけを使って棚卸減耗損の金額を計算します。
【具体例】
- 1回目:10個 × 単価100円
- 2回目:10個 × 単価110円
- 3回目(最後):10個 × 単価120円
→ 評価単価は120円を使用
この方法は、計算がシンプルで処理も速いため、実務でよく使われています。ただし、在庫の価格変動が激しい場合には、実態とズレが出ることもあるので注意が必要です。
個別法とは?
個別法(こべつほう)は、商品ごとに単価を個別に設定して管理する方法です。たとえば、パソコンや家具、自動車などのように、商品1つ1つの金額が高く、個別に識別できるような商品に適しています。
【具体例】
- 商品A:パソコン(仕入価格150,000円)
- 商品B:オフィスチェア(仕入価格30,000円)
→ 棚卸減耗があれば、それぞれの商品の単価で金額を計算
この方法は、在庫数が少なくて高額な商品を扱っている会社にはとても向いています。一方、在庫の種類が多くて個別管理がむずかしい場合には、実務上はあまり使われません。
在庫残高の修正も忘れずに
棚卸減耗損の金額を計算して会計処理をしたら、それだけで終わりではありません。帳簿に記録されている在庫の数量も、実際の在庫に合わせて修正する必要があります。
会計ソフトや在庫管理表を使っている場合は、実地棚卸で確認した数量を反映させて、帳簿とのズレをなくしましょう。棚卸の差をそのままにしておくと、損益や貸借対照表に誤りが出てしまい、税務調査などで指摘されるリスクもあります。
正確な在庫情報は、経営判断にも直結するため、できるだけ早く修正することが大切です。
棚卸減耗損の仕訳処理の事例
棚卸減耗損の仕訳処理は、原因や状況によって異なるため、実際のケースごとにどのように処理すればよいのかを知っておくことがとても大切です。
ここでは、よくあるケース別に、判断の考え方や仕訳の方法を紹介します。
ケース① 通常の棚卸で減耗が発覚した場合(売上原価として処理)
ここでは、自然な範囲で発生する棚卸減耗損について紹介します。
在庫を扱う中で、日常的に起こり得る破損や紛失などは「通常の減耗」とされます。このような場合は、売上原価として処理するのが基本です。
仕訳の例:
(借方)売上原価 ××円 /(貸方)商品 ××円
通常の業務の中で起こる損失であれば、このように処理して問題ありません。
ケース② 異常減耗の場合(販売費および一般管理費として処理)
ここでは、通常では考えにくいような異常な減耗について紹介します。
たとえば、保管ミスや在庫の誤廃棄、社内の不注意などが原因で、通常よりも大きな損失が発生した場合は、販売費および一般管理費として処理することがあります。
仕訳の例:
(借方)棚卸減耗損 ××円 /(貸方)商品 ××円
※「棚卸減耗損」は、会社ごとに費用科目を作って運用しているケースもあります。
ケース③ 災害・不正による大量ロスの場合(特別損失として処理)
ここでは、自然災害や不正による在庫の損失について紹介します。
火災や水害、地震などの災害によって在庫がなくなった場合や、横領・盗難などが原因で在庫が失われた場合には、特別損失として処理するのが一般的です。
仕訳の例:
(借方)特別損失 ××円 /(貸方)商品 ××円
このようなケースでは、損失の内容を記録に残しておくことが大切です。災害報告書や社内調査の記録を保管しておくと安心です。
ケース④ 棚卸益が出た場合
ここでは、実地棚卸をした結果、在庫が帳簿よりも多かった場合の処理について紹介します。
帳簿上では100個と記録されていたのに、実際には105個あったような場合、その差分は「棚卸益」として扱われます。棚卸益は、会社の方針によって以下のように処理されることがあります。
ケース④-1:棚卸差益として収益処理する場合
仕訳の例:
(借方)商品 ××円 /(貸方)棚卸差益 ××円
ケース④-2:売上原価で調整する場合(処理簡便化)
仕訳の例:
(借方)商品 ××円 /(貸方)売上原価 ××円
どちらの方法を使うかは、会社のルールや税理士の判断によって変わる場合があります。必ず事前に確認しておきましょう。
棚卸減耗損と決算整理仕訳の関係
ここでは、棚卸減耗損を「決算整理仕訳」として処理する場合の注意点について紹介します。
棚卸減耗損は、期末に行う実地棚卸で初めて明らかになることが多く、そのため多くの企業では「決算整理仕訳」として処理されることがあります。決算整理仕訳とは、期末の経理作業で行う特別な仕訳処理のことを指し、正確な損益計算や貸借対照表の作成のために欠かせません。
棚卸減耗損を決算整理仕訳で処理する際の主な流れと注意点は以下のとおりです。
- 実地棚卸を実施して、帳簿と実際の在庫数量の差を確認する
- 減耗損が判明しても、その場ではすぐに処理せず、期末にまとめて一括で仕訳処理を行う
- 棚卸減耗損の金額は、在庫の評価額に影響を与えるため、当期の損益計算にも直結する
また、決算整理仕訳では、消費税の課税区分や勘定科目の選び方について判断が必要な場面も多くなります。特に、異常な棚卸減耗であれば特別損失にするかどうか、通常の減耗であれば売上原価で処理するかなど、状況に応じた判断が求められます。
判断に迷う場合は、税理士や専門家に事前に相談して、正しい処理方針を確認しておくと安心です。
よくある質問(FAQ)
棚卸減耗損と棚卸評価損は何が違うの?
棚卸減耗損は「在庫の数量」が減少したことによる損失で、棚卸評価損は「在庫の単価」が下がったことによる損失です。 前者は帳簿数量と実地数量の差、後者は時価と帳簿単価の差に基づきます。
棚卸減耗損の勘定科目は「売上原価」だけでいいの?
ケースによります。正常な減耗であれば売上原価で処理することが一般的ですが、異常な損失や災害による損失であれば、販売費及び一般管理費や特別損失を使う方が妥当です。
棚卸減耗損はいつ仕訳すればいいの?
基本的には実地棚卸を実施した時点、特に期末の決算整理仕訳として計上されるケースが多いです。 ただし、四半期決算や棚卸月次の管理を行っている企業では、都度仕訳を行うこともあります。
棚卸益は利益として計上していいの?
原則として、棚卸益(実地在庫が帳簿より多い)は「帳簿ミス」などが原因のことが多いため、安易に利益計上するのは避けましょう。 どうしても計上が必要な場合は、「棚卸差益」などの勘定科目で処理します。
棚卸減耗損に消費税は関係ある?
基本的には課税仕入として仕入税額控除の対象外となるため、消費税を考慮しない「不課税」処理となります。 ただし、クラウド会計ソフトでは設定ミスで課税区分が誤ることがあるため注意が必要です。
明治通り税理士法人のサポート内容
ここでは、明治通り税理士法人が提供している主なサポート内容について紹介します。
経理初心者にもやさしい対応
明治通り税理士法人では、経理や会計の知識に不安がある方にもわかりやすく、仕訳の基礎や帳簿の見方からていねいにサポートしています。簿記に不慣れな方でも、具体的な事例をもとに一つひとつ確認しながら進められるため、安心して相談することができます。
棚卸減耗損の判断と仕訳処理の支援
棚卸減耗損については、発生した原因を一緒に整理しながら、それが通常の減耗なのか異常な損失なのかを判断するお手伝いをしています。その上で、適切な勘定科目の選定や、会計ソフト上での入力方法についても、実際の業務に即した形でアドバイスを行います。
決算整理仕訳や在庫管理の見直しにも対応
期末に行う決算整理仕訳の中で、棚卸差異がどのように影響するかを踏まえた処理の流れについても支援しています。在庫数量の管理体制や、帳簿とのズレをなくすための社内ルール作りなど、実務面での改善提案も行っています。初めて決算を迎える企業にも、必要な準備と対応方法をわかりやすく案内します。
クラウド会計導入のサポートも充実
マネーフォワードやfreeeといったクラウド会計ソフトの導入支援にも力を入れており、帳簿の電子化や業務の効率化を目指す企業に対しても、実践的なサポートを行っています。クラウド会計ソフトでの棚卸減耗損の処理方法や、設定上の注意点も丁寧に解説します。
全国対応・オンライン相談でいつでもつながる
Zoomなどのツールを使ったオンライン相談にも対応しており、全国どこからでもご相談いただけます。時間や場所にとらわれず、必要なときに専門家のアドバイスを受けられる体制が整っているため、日々の業務に忙しい方にもご好評をいただいています。
まとめ
棚卸減耗損は、帳簿と実地棚卸の差異により発生する損失であり、その原因や状況によって適切な勘定科目や会計処理方法が異なります。
「仕訳の方法がわからない」「売上原価にすべきか迷う」「異常減耗と通常減耗の区別がつかない」など、経理担当者が直面する不安も少なくありません。
実務においては、「迷ったら売上原価」で処理するのではなく、発生原因を明確にし、社内で処理ルールを統一することが重要です。
明治通り税理士法人では、棚卸減耗損の仕訳だけでなく、棚卸管理体制の見直しや、クラウド会計導入のサポートも行っています。 処理方法に迷った場合や、社内のルールづくりでお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。